不妊治療の受精方法
公開:2025.0711 更新:2025.0711
不妊治療には、「一般不妊治療」と「生殖補助医療(ART)」という治療方法があります。
いずれも妊娠を目指すという目的は同じですが、それぞれの治療方法がどのように違うのかについては、詳しくご存じない方もいらっしゃるかもしれません。
そこで本記事では、一般不妊治療で用いられる「人工授精」と生殖補助医療の「体外受精」について詳しくお伝えします。
不妊治療を検討している方は、ぜひご自身の治療法を選ぶ際の参考にしてください。
不妊治療とは
不妊治療を行う際には、その方の年齢やこれまでの治療内容などを考慮して、医師と相談して方針を決めていくものです。
そして、多くの場合、一般不妊治療の「タイミング法」からスタートして「人工授精」を試し、それでも妊娠しない場合には、生殖補助医療の「体外受精」「顕微授精」へと進めていくようです。
もちろん、患者さんの状態に合わせて、というのが一番重要なポイントですので、年齢やその他の要因を考慮して、医師がすすめる方法を選んで行うのが一般的です。
人工授精とは
人工授精は、採取した精子を子宮腔内に注入して受精を促す治療法です。
おもに精子無力症(精子の運動率が40%以下)や乏精子症(精子濃度が1,500万/ml以下)、性交障害(性交が困難な場合)などの男性不妊が適応となります。
精液をそのまま注入すると、感染リスクや子宮収縮による痛みを引き起こす可能性があるため、精子を洗浄・調整したうえで、運動性の高い精子を選んで注入します。
また、人工授精では排卵のタイミングに、正確に合わせることも重要です。
そのため、基礎体温や頸管粘液、尿や血液のホルモン値などをもとに排卵日を予測して実施します。
不妊治療の中でも、受精プロセスは精子と卵子のチカラに任せて行うので、より自然妊娠に近い形の治療法といわれています。
体外受精とは
体外受精は妊娠の過程のうち、精子と卵子を採取して受精を体外で行い、その受精卵(胚)を妊娠しやすいタイミングで子宮に戻すことにより、卵管を通らずに妊娠させる治療法です。
女性から採取した卵子に、男性から採取した精子をふりかけて、精子を自力で卵子と受精させます。一般不妊治療では効果を得られなかった場合に、次に行う不妊治療のひとつで、女性の卵管に問題のある場合や、受精しにくいなどの症状がある場合、男性不妊の場合などに有効とされています。
なお、日本産科婦人科学会が2024年に発表した、“2022年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績”によると、体外受精の出生数は約8万人に上ることがわかりました。
参照元:日本産科婦人科学会「2022年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績」
https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf
体外受精の場合、受精したのを確認した後、さらにその胚を培養してから子宮に戻すので、一般不妊治療のタイミング法や人工授精に比べて妊娠率が高くなります。
また、自然妊娠同様、精子を自力で卵子と受精させるため、卵子が傷ついたりするリスクも低く、卵管性不妊や抗精子抗体を持つ女性にも効果的なことなども、近年の増加に関係しているものと思われます。
顕微授精とは
顕微授精は、体外受精による生殖補助医療のひとつで、1992年に初めて成功した比較的新しい治療法です。
“卵細胞質内精子注入法(ICSI)”とよばれ、顕微鏡を使用して、形態が正常で運動能力の高い精子を選び、非常に細いガラス針で卵子の細胞質内に精子を直接注入し、受精を促します。
つまり、精子が卵子に自力で侵入する過程を人工的に行うのが、顕微授精の特徴といえるでしょう。
また顕微授精は、ひとつの精子を直接卵子に注入するので、精子の数や運動率に関わらず治療が可能なため、
当初は男性不妊や受精障害への適応として行われました。しかし、体外受精よりも妊娠の確率が高いといわれていることもあり、近年では、顕微授精の適用率が増加し、通常の体外受精を上回るほどになっています。
ただし、比較的新しい技術であるため、胎児に対する影響については未だ医学的な結論は出ておらず、顕微授精を行った際に、染色体や遺伝子に何らかの影響が発生する可能性はゼロとはいえないようです。
参照元:一般社団法人 日本生殖医学会
顕微授精は精子を一つ選んで体外受精、人工授精は子宮に精子を注入する治療法
本記事では、一般不妊治療の「人工授精」と生殖補助医療の「体外受精」「顕微授精」の概要について紹介しました。
人工授精は精子を子宮に注入して自然妊娠を促す方法で、排卵のタイミングを正確に計ることが重要です。
また、通常の体外受精は卵子と精子を体外で受精させ、その胚を子宮に戻します。
一方、同じ体外受精のひとつである顕微授精は、精子をひとつだけ選び、卵子に直接注入する方法で、受精の成功率が高まるとされています。
それぞれの特徴を理解したうえで、専門医と相談して目標達成を目指してください。